1 はじめに
法的に加入義務のある自動車賠償責任保険に加え、任意保険にも加入しておくべきことについて、以前にお伝えしましたが、今回は、車両保険加入による利点
・・・(続きはこちら) 1 はじめに
法的に加入義務のある自動車賠償責任保険に加え、任意保険にも加入しておくべきことについて、以前にお伝えしましたが、今回は、車両保険加入による利点についてお伝えしたいと思います。
車両保険(御自身の車両が事故により損傷した場合に、修理費用などを、事故の相手方ではなく御自身の保険会社に支払ってもらうための保険。)の加入率は、任意の賠償責任保険(事故の相手方に対する賠償金を保険会社に支払ってもらうための保険。)に比べ低いとの統計があります。(賠償責任保険が70%台であるのに対し、車両保険は40%台)
加入率が低い理由について、車両保険の保険料が比較的高めであることが理由と思われます。
しかし、弁護士として交通事故の案件を扱っている立場からすると、車両保険には、次のような利点があり、できれば加入することをお勧めします。
2 相手方が任意保険に加入していないことに対する備え
自動車賠償責任保険は、死亡やけがに対する賠償のための保険であり、物損(車両の損傷など、物の損害。)は対象外です。
これに加えて、自動車賠償責任保険は、これに加入していない場合は法律違反となり、場合によっては刑罰に処せられるとの強制力があるのに対し、物損に関する保険については加入義務がないため、物損の方が「事故の相手方が保険に加入していなかった」となる可能性が高くなります。
そして、相手方の資力が不十分であったり無資力である場合には、仮に裁判で勝訴したとしても、相手方から必要な支払を受けることができない、ということがあり得ます。
これに対し、車両保険に加入しておけば、必要な費用を御自身の保険会社から支払ってもらうことができるため、支払ってもらえないとの事態を回避することができます。
3 相手方保険会社とのトラブル回避
相手方が任意保険に加入しており、必要な賠償額が支払われることについて確実であったとしても、実際の支払までには、相手方本人や相手方の保険会社との間で、過失割合や実際の損害額についての合意することが必要であるところ、事案によっては、合意ができず、裁判までもつれてしまうことがあります。
このような場合、車両保険に加入していれば、過失割合に関係なく、必要な費用の支払を受けることができ、相手方とのトラブルを避けることができます。
4 保険料の値上がりについて
車両保険を使用した場合、その後一定期間、保険料が値上がりしますが、このことも車両保険加入率が低い理由かもしれません。
しかし、昨今の車両保険の中には、無過失特約といって、被害者に過失がなければ、車両保険を使用しても保険料の値上がりがないとの特約があります。
事故の中で一番数が多いと思われるのが「停止中、相手車両に追突された」という類型であり、被害者に過失がない事故であるため、無過失特約があれば、車両保険使用による保険料の値上がりを避けることができる可能性があります。
5 相手方の物損提示額の妥当性の確認
相手方が任意保険に加入している場合、物損に対する確認は、相手方保険会社により行われるのが一般的です。
相手方保険会社には、相手方が賠償責任を負う場合には保険金支払義務があり、その前提として、上記確認を行う必要があるためです。
しかし、車両保険に加入している場合には、御自身の保険会社も同様の義務を負うため、確認作業を行うこととなります。
これにより、相手方が示す物損の額が妥当かどうか、御自身の保険会社の見解と比較して判断することができます。
5 おわりに
最後は、保険料支払によるご負担を踏まえての判断かとは思いますが、車両保険の必要性について、見直していただければと思います。