1 交通事故のあと、保険会社から示された示談金の額が妥当な額であるかについてご相談を受ける際、相談者の方より「弁護士基準で示談できるか?」といったご質問を受け
・・・(続きはこちら) 1 交通事故のあと、保険会社から示された示談金の額が妥当な額であるかについてご相談を受ける際、相談者の方より「弁護士基準で示談できるか?」といったご質問を受けることがあります。
ネットなどでは、示談に際し、異なるいくつかの基準があるとしているものがあるようです。
2 しかしながら、何らかの区分がされた基準があるわけではありません。
順を追って説明すると、以下のとおりとなります。
⑴ まず、基準となるのは、裁判となった場合の基準です。
交通事故は、他の類型の事件に比べ、日本全国、多数の 事故が発生し、事件同士の比較が可能な事件といえます。
このような事件において、裁判所の考え方次第で、同じような事故であるにもかかわらず、異なる判断がされたのでは、不公平になってしまいます。
そのため、事故の態様に応じた過失割合や、通院期間や後遺障害の程度に応じた慰謝料の目安が考案され、公刊されています。
赤本と呼ばれる、赤い表紙の本が代表例ですが、この本については、少なくとも東京周辺の裁判所、弁護士事務所及び保険会社に参照され、交通事故の解決に携わる者であれば、必ず把握すべき内容となっています。
⑵ しかし、上記の基準は、あくまで裁判になった場合の基準であり、示談が成立する場合は、裁判の基準よりも若干減額された金額となることが通常です。
これは、お互いが譲歩して早期解決を図るという示談の性質のほかに、裁判における基準が、最後の手段である裁判にまで至ったことによる、労力や時間を要したことを考慮して定められているため、裁判の手前で無事解決したのであれば、その分を減額すべき、との考えによるものです。
⑶ これらとは別に、自動車賠償責任保険(以下「自賠責」といいます。)による基準があります。
自賠責の保険金支払基準は、自動車事故に対し最低限の保障を行うとの自賠責制度の目的のため、上記の各基準よりも低い金額にとどまるのが一般的です。
ただし、同保険の特殊な規定として、原則として過失相殺はしない、過失相殺がされる場合でも一般的な過失割合よりも低い割合での減額にとどめるとの規定があるため、被害者側の過失割合が高い場合には、過失相殺を考慮した一般的な示談の基準よりも、同保険の基準により算定した金額のほうが高くなることがあります。
3 ネットで見受けられる弁護士基準は、多くは⑵の場合を指すようですが、なぜ、このような呼び方ができたかというと、弁護士が関与しない状態で、一般の方が保険会社相手に示談を求めた場合、⑵よりも低い金額か、場合によっては最低基準である自賠責の基準に基づく金額しか示されないことが多いところ、これが、弁護士に依頼することにより、⑵の金額に増額される場合が多いことから、この増額後の金額に対し「弁護士基準」との呼ばれ方が生じたのではないか、と考えます。
本来は、弁護士関与の有無にかかわらず、自賠責の基準ではなく、一般的な示談の基準で示談がされるべきです。
しかし、一般の方々が「どの程度が妥当な金額か」を書物やネットの知識だけで判断することは難しい一方、保険会社は、被害者に対する支払をなるべく抑えたいと考えることから、上記のような現象が起きてしまっています。
4 保険会社から示された示談金が妥当かについて、ご相談を受け、当方が対応した結果、増額されたケースが複数あります。
最近のケースでは、当初提示額は300万円弱であったものが、一般的な示談の基準により算定し直し、提示した結果、1000万円を超える金額にまで増額され、無事示談することができたケースがありました。
保険会社から示談金が提示された場合、弁護士にご相談することをお勧めします。