自賠責保険のほうが有利な場合

1 はじめに
 自賠責保険は、任意保険に比べると限度額が低くなっており、自賠責保険のみで全ての賠償をカバーするには足りないことが多いですが、ときに、裁判基準では市原なわれないはずの賠償金が、自賠責保険によって支払われることがあります。
 そのような例の一つして、被害者の過失割合が大きい場合が挙げられます。

 

2 問題となった事例
 この事例は、信号機のない交差点での、互いに直進する被害者運転のバイクと、自動車との衝突事故でした。
 仮に、過失相殺前の損害額として、治療費が75万円、慰謝料が75万円とします。
 治療費は、事前に保険会社よりすでに支払われていました。
 このため、過失割合が50:50の本件については、すでに損害額の半分が相手方から支払われている以上、仮に裁判に訴えたとしても、「必要な賠償金が支払われている」ことを理由に、請求は棄却されてしまうことになります。
 裁判の基準では、被害者は、75万円までしか支払を受けることができません。
  
3 自賠責保険の場合
 これに対し、自賠責保険の場合は、けがに対する保険金限度額120万円から、治療費75万円を差し引いた45万円が支払われます。
 なぜ、裁判の基準と異なる結論になるかというと、自賠責保険の場合、過失割合が7割未満であれば、過失相殺はされないことが理由です。
 過失相殺がされない結果、自賠責保険の限度額120万円の範囲で、被害者に対する賠償がされたものです。

 

4 まとめ
 多くの場合、被害者への支払額について、自賠責保険での基準による支払額の方が、裁判基準による支払額を下回ることが多いですが、被害者の過失割合によっては、今回の事例のような逆の結果が生じることがあります。
 裁判基準での支払額が低い場合、自賠責保険での基準も併せて確認することが必要となります。

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