交通事故に遭った際の医療費と社会保険

1 はじめに
 事故に遭った際の医療費について、相手方が任意保険に加入している場合は、相手方保険会社より医療費が支払われ、被害者は窓口での支払をせずに済むことが多いです。
 このような場合、社会保険の出番はないのですが、相手方が任意保険に加入していなかったり、途中で保険会社が医療費の支払を止めてしまった場合に、全て自費にて受診することは、被害者の方にとって経済的負担が大きいことから、社会保険の使用を検討しなければならない場面となることがあります。
 このとき、注意しなければならないのは、つぎの3つです。
 ① 健康保険(国民健康保険)と労災保険の区別
 ② 第三者行為による傷病届の提出
 ③ 示談をする際、健康保険・労災保険の了解を得ること

 

2 健康保険(国民健康保険)と労災保険の区別
 自分の費用負担にて医療機関を受診する場合、健康保険を使って受診することが一般的です。
 しかし、健康保険と労災保険では役割分担があり、仕事中または通勤途中(帰宅も含む)の場合は労災保険からの医療費支払、これ以外は健康保険からの医療費支払と決められています。
 これに従わず、労災保険を使うべきであるのに健康保険を使ってしまった場合、健康保険より、健康保険が負担した7割分の医療費について、被害者本人からの支払を求められることがありますので、注意が必要です。
 
3 第三者行為による傷病届の提出
 事故によって生じた医療費は、最終的には加害者本人が負担し、賠償すべきものです。
 被害者本人が自ら医療費を支出した場合、これを加害者本人(または同人が加入する保険会社)に賠償請求することができるのと同じように、健康保険や労災保険が支払った医療費についても、健康保険・労災保険が加害者本人に請求できるわけですが、このためには、事故の年月日、状況及び加害者等について、被害者から健康保険・労災保険に知らせる必要があります。
 このための届け出を「第三者行為による傷病届」といいます。
 第三者行為届の書式や、届け以外に必要な書類について、保険ごとに違う場合がありますので、健康保険・労災保険の担当者に確認するようにしてください。
  
4 示談をする際、健康保険・労災保険の了解を得ること
 示談(相手方と、被害者本人に対する支払額について合意し、これ以外の請求は被害者から相手方に対ししないことを確認すること)をする場合、必ず、示談の前に、第三者行為届を提出した健康保険または労災保険に報告し、了承を得ることが必要です。
 これを怠ってしまうと、健康保険・労災保険が支払った分について、被害者本人に請求されることがありますので、注意してください。

 

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