事件と弁護士費用
1 事件解決を弁護士に依頼する際、その費用として真っ先に皆様が思い浮かべるのは、弁護士に対する報酬(以下「弁護士報酬」といいます。)ではないかと思います。
実際、これから述べる事件解決に必要な費用のうち、弁護士報酬が大きな割合となるのは確かです。
2 しかしながら、契約する弁護士や事務所の方針にもよりますが、実際には、事件解決までに、弁護士報酬以外にも、以下のような費用が発生します。
⑴ 書類作成、送付に係る費用(コピー代、郵送費用など)
⑵ 現場や裁判所などへの移動に際しての交通費、日当
⑶ 事故の状況図作成や専門家の意見に基づく文書を作成する際、外部機関(調査会社など)に支払う費用
上記の費用のうち、⑵及び⑶は、相手方との協議がうまくいかず、裁判所に対する訴えを提起した場合に発生することが多く、逆に話し合いにより解決できるのであれば、⑴のみか、⑶のうち現場確認とその図面作成のための費用(例えば、事故現場において、事故関係者による事故の状況についての説明に基づき、事故の状況図を作成する場合など。事案にもよりますが、数万円程度。)くらいで済みます。
しかし、裁判となり長期間争われる場合には、裁判の期間に応じて、その費用は増えることとなり(裁判を続けることによる書類の費用や、裁判所への出頭費用が増加するため。)、⑶のうち専門家の意見に基づく文書を作成する場合は、数十万円あるいはそれを超える費用を要する場合があります。
「裁判には時間とお金がかかる」のは事実であり、これを避けるために、裁判にまで至る前に話し合いによる解決に向けた努力がされるわけです。
3 また、一定の結論を得るに当たり、高額であってもその費用の支出が不可欠となる場合があります。
上記⑶の図面や文書の作成にかかる費用がそれであり、その内容が事件の結論を左右することがあります。
私が経験した裁判の事例では、通常の玉突き事故(通常は死亡にまで至ることがない事故)であるにもかかわらず、事故の数日後に被害者が死亡したところ、その死因を巡り、事故が原因なのか、それとも被害者の持病である心臓疾患が原因であるのかが争われた事例がありました。
上記の死亡原因について、地裁は事故が原因であるとしましたが、高裁において、心臓疾患による死亡としても被害者の身体の状況(解剖結果)と矛盾しないとの専門家の意見書を提出したところ、裁判所もこれを認め、最終的な解決となりました。
この事例では、専門家の意見書が解決に不可欠であったわけですが、そのために高額な費用を要したことも事実であり、当該費用の支出なくしての解決は見込めない事案でした。
4 このように、紛争解決までには、弁護士に対する報酬以外にも様々な費用がかかります。
また、事件解決のためには、弁護士報酬のみならず、上記3のような、専門家への費用支払が必要となる場合もあります。
事件解決のために一定の費用を要する場合、これを支払うことができない場合は、正しい結論が得られないという事態もあり得ます。(上記3の事例で、専門家の意見書が提出されなかった場合など。)
5 そこで、ご加入の保険契約に弁護士費用特約がある場合には、ぜひ加入されることをお勧めします。
弁護士に依頼する際の費用負担が避けられるだけではなく、事件解決に必要な費用の備えにもなるためです。
依頼を受ける弁護士の立場としても、事件解決に必要な費用が工面できず、本来得られるべき結論が得られないような事態は、できれば避けたいものです。
「適切な解決を得るための備え」として、弁護士費用特約への加入をご検討いただければと考えます。