事故に遭い車両が損傷したときの心構え
1 事故によりご自身の車両が損傷した場合、以下の事項に留意していただけると、事故による悪影響や不安を小さくすることができるかと思いますので、参考にしていただけると幸いです。
2 車両の損傷状況の確認、保存
車両の損傷状況により、修理内容や修理費が異なるだけではなく、後でお話しする経済的全損(修理費が、事故当時の車両価格を上回る状態)と呼ばれる状態かどうかの判断にも影響します。
このため、事故後、なるべく早い段階で、損傷状況を確認し、書類としてまとめておく必要があります。
相手方が任意保険に加入している場合には、相手方の保険会社の担当者(車両の損傷状況や修理費の算定を専門的に行っている、アジャスターと呼ばれる方)が車両を確認し、写真撮影をするなどします。
一方、相手方が任意保険に加入していない場合には、相手方の保険会社による確認は行われませんので、修理工場に依頼して、車両の撮影や修理費用の見積もりをしてもらう必要があります。
また、ご自身の車両保険により修理を依頼する場合には、ご自身の保険会社のアジャスターが、上記写真撮影や見積もりの検討を行います。
上記の確認をする前に、廃車の手続をすることは避けてください。
3 修理費の確定
相手方の保険会社担当者が確認した場合は、同人が、必要な修理費用や事故当時の車両の価格について検討し、後で説明する経済的全損に当たらないのであれば、修理工場と修理費用について協議し、担当者と工場が修理費や修理内容についての合意(協定)をした得た上で、修理が行われます。
修理費は、相手方保険会社から修理工場に直接支払われるのが一般的です。
被害者自身の車両保険を用いて修理をする場合も同様です。
これに対し、相手方が任意保険に加入していなかった場合には、被害者自身が修理工場に修理費を支払い、次いで加害者に当該支払分を請求するのが一般的です。
上記の場合は、修理費の妥当性につき、相手方から争われないよう、損傷状況の写真撮影や修理見積もりにつき、慎重に行うよう、修理工場に依頼してください。
4 経済的全損について
(1)車両が損傷した場合、修理代金相当額につき賠償されるのが一般的ですが、事故当時の車両価格が、修理代金を下回る場合には、賠償の範囲は車両価格の範囲にとどまります。
上記の状態を経済的全損といいます。
このような取り扱いがされるのは、事故当時の車両価格と同等の金員が支払われるのであれば、高額な修理をせずとも、他の同種車両を中古車市場から調達し、使用することができるとの考えによるものです。
(2)他の車両を購入する際、車両それ自体の価格のほかに、登録費用など、買い替え手続のための費用が発生する場合がありますが、この費用についても、相手方に請求することができます。
5 評価損について
事故後の修理が完成した場合でも、事故に遭っていること自体が、消費者から敬遠され、車両価格が低下することがあります。特に、車両の骨格部分といわれる部分が損傷した場合には、その可能性が強くなります。
この状態を評価損といい、車両の下取りや転売を求めた際に、上記車両価格の低下が明らかになり、これを相手方に請求できるかが問題となります。
訴訟(裁判実務)では、修理内容、初度登録から事故日までの期間及び走行距離などを考慮し、修理費の3割(初度登録から間もない時期において事故発生となった場合)までの範囲で、評価損を認め、相手に賠償を命じることが多くなっています。
ただし、不動産鑑定における基準地価格のような、公的な基準が定められているものではありませんので、過去の裁判例の傾向を見ながら判断していくことになります。
6 過失割合について
事故発生の原因につき、相手方のみならず、被害者にも一定の過失割合が認められる場合には、上記に述べた損害額から、落ち度に応じた額が減額されます。
例えば、被害者の過失割合が1、相手方の過失割合が9とされた場合には、100万円の修理費を要するとされた場合、相手方が賠償すべき範囲は、100万円から1割を減じた90万円となります。
7 終わりに
様々な事故態様のうち、車両の損傷は、比較的多くの方が接する事例かと思いますが、上記のとおり、いろいろな問題がありますので、お困りの際は、弁護士にご相談ください。