加害者が自転車である場合の告訴について

1 はじめに
 交通事故を物件事故(物損事故)から人身事故に切り替える場合、被害者が(事故による)ケガをしたことが記載された診断書を警察に提出すれば、人身事故に切り替わります。
 しかし、加害者が自転車である事故の場合は、診断書の提出のみでは足りず、告訴が必要とされています。
  なぜでしょうか。

 

2 適用される罪名の違い
 自動車(道路交通法2条1項9号の「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車」。四輪自動車、バイクなど)及び原動機付自転車による事故において死傷者が生じた場合、多くの場合は、過失運転致死傷罪が適用されます。
 同罪の適用に当たっては、告訴は要件とはされていません。
 しかし、自転車が加害者の場合、自転車は自動車等には当たらないため、過失運転致死傷罪の対象とはならず、刑法209条1項の「過失傷害罪」が適用されます。
 そして、同条2項で、過失傷害罪を適用して処罰するためには告訴が必要となることが規定されています。
 このため、加害者が自転車の場合には、告訴が必要となります。

 

3 告訴の方法について
 告訴状の提出が必要となります。
 告訴状は、簡単な事例であれば、警察が参考となる文案を示してくれることが多いようです。
 また、告訴について規定した刑事訴訟法241条では、検察かまたは警察官に口頭で告訴することができる旨、規定されています。
 告訴期間は、犯人(事故の相手方)を知った時から6か月とされていますので、期間を過ぎないように注意してください。

 

4 告訴をする目的
 本来、告訴は相手方の処罰を求める行為ですので、相手方の処罰を目的とする時に告訴すべきです。
 しかし、告訴をしたことの効果として、告訴をすることで、事故の状況が明らかになり、これが民事の損害賠償請求に役立つことがあります。
 交差点での衝突事故のように、双方の過失の有無・割合が争われることが予想される事故については、事故の状況を明らかにする必要があります。
 告訴をし、警察が事故の捜査をした場合、見ることができる範囲は事案により異なりますが、事故の被害者が、警察が作成した書類を確認し写しを得ることができます。
  この書類が、損害賠償請求に役立つことがあります。

 

5 おわりに
  告訴については、事案によっては難しい問題が起こることがありますので、専門家である弁護士にご相談ください。

PageTop