被害者が加入する保険の使用について

交通事故

1 はじめに
 事故の被害に遭われた場合、相手方が任意保険に加入していれば、相手方の任意保険から賠償を受けるのが原則です。
 しかし、相手方の任意保険から支払を受けるよりも、被害者が加入する任意保険から支払を受けた方が良い場合があります。

 

2 過失割合が発生する場合


 ⑴ 過失割合が及ぼす影響
 相手方に追突された事故については、被害者に過失がないとされ、加害者より損害全額の賠償を受けることができるのが一般的です。
 しかし、交差点での車両同士の衝突事故など、追突事故以外の多くの事故では、被害者にも過失があるとされ、事故の状況・類型に応じた過失割合が発生することにより、損害額の全部を加害者から賠償してもらえない場合があります。
 例えば、修理費が100万円かかった場合、被害者の過失割合が10、相手方の過失割合が90である場合は、相手方より賠償されるのは90万円となり、残り10万円は、被害者が負担しなければなりません。
 また、相手の車両の修理費として50万円が発生した場合、相手方に対し50万円の

1割である5万円を支払う義務があります。


 ⑵ 修理費を被害者の車両保険から支払った場合
 被害者が加入する車両保険から修理費を支払う場合には、過失相殺されることはありません。
 修理費が相当かどうか、支払われる保険金額の上限による制限はありますが、相手方に支払を求める場合と異なり、過失割合に応じた減額が生じることもありません。
   このため、過失割合による減額が見込まれる場合は、相手方に請求するのではなく、被害者が加入する保険から支払をしてもらうことを検討したほうがよいです。


 ⑶ 保険料の値上がりがあっても、被害者にとって有利な場合
 車両保険を使用した場合、保険料が値上がりします。
 しかし、例えば、被害者の負担額(過失割合による減額と相手方への支払額の合計額)が20万円、保険料の値上がり額が10万円であれば、保険料の値上がりを考慮しても車両保険を使用したほうがよいことになります。
 加入する保険会社に対して10万円を支払う代わりに、保険会社から相手方や被害者自身に20万円を支払ってもらうのと同じことになるためです。
 一般的に、負担額が保険料の値上がり額を上回る場合は、保険を使ったほうがお得になります。

 

 ⑶ 人身傷害特約(けがに対する支払)、代車費用特約(レンタカーの費用に対する支払)
 特約の使用に対しては、保険料の値上がりは生じないことが一般的です。
 このため、過失割合による減額が見込まれる場合には、相手方に請求するより、これらの特約から支払ってもらったほうが、過失割合による減額がなく、被害者にとって有利です。

 

3 相手方の資力が乏しい場合
 当然のことではありますが、相手方の資力が乏しい場合、相手方からの賠償金支払は事実上不可能です。
 このような場合には、被害者の保険から支払を受けることで、相手方からの支払に代えることができます。

 

4 相手方との紛争を避ける場合
 代車費用(レンタカーの費用)について、代車の必要期間を巡り、争いとなることがあります。
 このような場合、代車費用の全部を相手方に請求するのではなく、一部を被害者の保険から支払ってもらうようにすれば、相手方の負担が減るため、争いを避けることができます。

 

5 おわりに
 交通事故の紛争を解決するためには、相手方からの賠償金獲得だけではなく、被害者が加入する保険を活用することが役に立つことも多々あります。
 保険の活用も含め、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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