優先道路走行車と過失割合について

1 はじめに
 優先道路とは、交差点内で、交差点内でも途切れることなくセンターラインが引かれている道路のことを言います。
 この道路を走行する車両は、見通しの悪い交差点で徐行する義務が免除されているなど、優先的な地位が与えられています。
 しかし、交差点で、。優先道路に進入しようとした車両(劣後車)と衝突した場合、全く無過失とはされておらず、特段の事情がなければ、優先道路走行車1、劣後車9の過失割合が発生するとされています。
 これを基本的過失割合といいます。
  
2 上記の過失割合を0とすることができるか
 過失割合は、文字どおり過失の割合なので、優先道路走行車が無過失であれば、その過失割合は0となります。
 例えば、劣後車が交差点手前で止まっていたので、優先道路走行車がそのまま進行し、交差点内に進入したとたんに、劣後車が急発進して衝突したような場合には、優先道路走行車は無過失とされます。
 優先道路走行車としては、避けることのできない事故であるためです。
 しかし、その一方で、優先道路走行車といえども、交差点内での事故を避けるよう、なるべく安全な方法と速度でで進行すべき義務があること、基本的過失割合と異なる割合とするためには、証拠に基づいて立証する必要があることから、無過失を立証するのは困難であることが多い、というのが実情です。

 

3 対策
 ⑴ ドライブレコーダーの設置
   過失割合は、事故状況に基づいて判断されます。
   ドライブレコーダーは、事故状況を画像として保存するため、事故状況について非常に重要な証拠となります。
   ただし、ドライブレコーダーが設置されていても、操作に不慣れなため、データが上書きされてしまうなどして、役に立たなかった、という話をしばしば聞きます。
   ドライブレコーダーを取り付けるだけではなく、いざというときの操作方法についても、きちんと確認しておくべきです。
   また、合図(ウインカー点滅)の有無について明らかにするために、画像だけではなく音声も記録しておくことも重要です。

 

 ⑵ 人身事故の届け出
   人身事故の届け出の有無により、賠償額が高くなったり安くなったりすることはありません。
   しかし、人身事故の届け出をすることにより、警察は、実況見分調書といって、事故状況の図面を作成することになり、この図面の内容が、過失の有無について大事な証拠となることがあります。
   これに対し、人身事故の届け出をしない場合は、簡易な図面しか作成されず、この図面では、過失の有無について判断することができないことが多いです。
   交差点での事故のように、過失の有無及び割合について争いとなることが予想される事故については、人身事故の届け出をしたほうがよいでしょう。
   届け出は、診断書を警察に提出して行います。


 ⑶ 車両保険・人身傷害保険(特約)への加入
   上記の各保険は、車両の損傷や事故によりけがをした際、相手方からではなく自身の保険会社より修理費や医療費などが支払われる保険となります。
   相手方から支払を受ける場合、相手方は過失割合により減額された範囲でしか賠償義務を負いませんが、自身の保険から支払ってもらう場合は、過失割合の程度にかかわらず、損害全額を支払ってもらうことができます。
   このため、これらの保険を活用することにより、過失割合による減額の影響だけではなく、無過失であることの立証による負担をも回避することができます。

 

4 おわりに
 過失割合の問題は、複雑な問題となることが多いので、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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